コロナ禍の行く末はまだまだ不透明ではありますが、緊急事態宣言がこの10月1日に解除された状況の中で、数多くの来賓並びに関係者の皆様のご参加のもと、本日、えにしアカデミーが挙行できますことに感謝申し上げる次第です。

 新入塾生の30名の皆様、明日の福祉をけん引するリーダー養成を目指すえにしアカデミーへの入塾おめでとうございます。県行政、高齢、障害、保育等、幅広い福祉現場から入塾いただき、心より歓迎します。また、塾生をお送りいただいた所属法人事業所の皆様には、えにしアカデミー設立趣旨に理解をいただき感謝申し上げます。

 さて、滋賀県の福祉の誇るべきところは、糸賀先生など滋賀の福祉の先人がつくってきた福祉風土を土台として民間の実践者が制度がなくとも現場実践し、それを県行政が方向性を共にし、福祉施策として一般化してきたことにあると私は考えています。私なりに言い換えるならば、福祉のこころとかたちの共感が現場と行政にあったからではないかと思います。

 私が畏敬します福祉の先輩が大切にしていた福祉のこころは糸賀先生の言葉でした。それは「この世の中には全体としてどんなに繁栄があっても、その中で不幸に泣く人がひとりでもいれば、それは厳密な意味で福祉に欠けた社会といわなければならないと思う、社会福祉という言葉の意味は、社会全体の組織の中で一人ひとりの福祉が保証される仕組みをいうのである。経済的な意味でも社会的な意味でも不平等感や差別感が克服されなければならない。そして、ひとりももれなく人間として生まれてきた生きがいを豊かに感じられるような世の中をつくらねばならない」という言葉です。

 福祉のかたちの二本柱のひとつである福祉施策を振り返ってみますと、介護、障害、子育てについてサービスの外部化が進みました。そして対象者別の専門的対応が進み、医療・福祉連携そして地域包括ケアへの展開がまだまだ課題の状況です。福祉のかたちのもう一つの柱である福祉人材は深刻な人材不足という問題があります。

 こうした福祉のこころとかたちについての私の問題意識は、福祉の制度の持続可能性の前に福祉人材の持続可能性であります。

 滋賀県社会福祉協議会は来年、令和4年に法人化70周年を迎えますが、これから30年後の創立100年に向かって取り組むべき課題としてこの深刻な人材不足に滋賀の福祉の専門性の社会的評価や職業イメージを高める、育てる人を育てるという3つの観点から取り組むこととしました。それが本県独自の滋賀の福祉人キャリア形成プロジェクトであります。本県独自とは、全国的に福祉分野におけるキャリアパスは各事業者や職能団体が主体的に整備していくこととされていますが、それに加え公私協働より、えにしアカデミー修了後の処遇において事業所はもとより、滋賀県ならびに滋賀県社会福祉協議会が関与していく仕組です。

 今般、えにしアカデミーに入塾された皆さんは、はからずも創設時の入塾生となりました。塾生の所属法人事業所も同様です。えにしアカデミーでの福祉のこころと福祉のかたちの学びが、皆さん一人ひとりの福祉哲学を醸成し、それぞれの事業所・分野・地域において育てる人を育てる役割を担い、滋賀ならではの、質の高い滋賀の福祉の未来を創っていくものと期待しています。

 公私協働による滋賀独自の福祉人材の多様なキャリア形成支援として明日の福祉をけん引するリーダー養成の場である「えにしアカデミー」の開学をここに宣言いたします。

          

                          令和3年10月4日

           滋賀県社会福祉協議会会長 渡邉 光春

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